2022年1月に心に残ったもの

2021年に見たり聴いたりしたもの、振り返ろう!!と思ったけど、とてもそんな時間はなかったし、いろんなことが思い出せなかった。こういうのはこまめにやった方がいい。

時系列順

 

◯熊倉献『ブランクスペース』1.2巻

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1巻が無料公開されていたのをきっかけに読んだ。想像力の話。すごく洗練されている。数話にして時間をかっ飛ばしたのでびっくりした。それでみるみる遠いところへ突き進んでいる。短編集を読んで、この人のアイデアは相当ぶっとんでいるので、長編でそれをしっかり膨らましたものを見せてもらえるのはすごく楽しみだなって思った。


◯ノムラララ『夏の魔物』1.2巻

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オメガバースという諸刃の剣、危ういジャンルを使って、すごく普遍的な、他者への欲望について描いていると思った。椎名うみが帯をかいている漫画、みんなおもしろい。


◯『花束みたいな恋をした』

2021年いちばんの話題作をようやく見て、ようやく去年を終わらせることができた。カルチャー!固有名詞!共感性羞恥!みたいな感想がなぜか届きがちだったので、自分もぶった斬られることに怯えていたけど、でもまあそこまででもなかった。
なんか感想がぜんぜんでてこないな。まあ、わたしにとってのカルト映画ではぜんぜんないから、ふつうに誠実だな〜魅力的だな〜と思った。あとカルテットは見てみたい。
あっそうだ、リアリティーラインのことを考えたと思う。大豆田とわ子の方が「おはなし」っぽくて、こっちのがあるある!!いるいる!!寄りだから自分のことを語りたくなったり、拒絶反応が出たり、実在感について取り沙汰されがちだけど、そういうリアリティーショーのような質感(たぶんみんなそういうのがいちばん好きなんだと友達の感想をきいて思った、言い方悪いけど)に見せかけながらも、すごく抽象的な、象徴的な展開が多くて、そういう混ぜ込み方がうまくて格好いいなと思った。


志村貴子放浪息子』1〜15巻

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女の子になりたい男の子、女の子をやめたい女の子、とか、そういう風に単純に図式化しないで、心変わりを認めて、それを幼さや若さのせいにもしないで、そういう矛盾する、揺らぎ続けている感情は自分だけのものだ、てことをずっと描いている物語だと思った。終盤になって、登場人物たちがどんどん遠ざかり、終わりに向かってそれまでと違うトーンで加速していくのが、さみしくて美しくて食い入るように読んだ。数日間胸にぽっかり穴があいたようだった。


ミシェル・ウエルベックセロトニン

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面白かったっていうよりも、個人的な経験ゆえに印象に残った。男性性。


◯『ハウス・オブ・グッチ』

色々見たい映画がある。積読がある。でも時間がなくて見れなかったりする。そういう欲望の取捨選択の中で、わたしのアダムドライバーを大画面で見たい欲、相当強いことがわかった。
アダムドライバー、いい映画にしか出てないから相当追いやすい。最後の決闘裁判であの役で、今回こんなにチャーミング大放出なの、すごい。うええ〜!!いいんですか〜!!ってなった。
ただ、映画としては、なんというかわたしこういう映画をどう楽しめばいいかわからない。今まで見てきた映画の何にも似ていなかったからかもしれない。淡々としている。あの豪華絢爛なグッチのお話なのにケレン味に欠けるように思ってしまった。


◯The Weekend『Dawn FM』

Dawn FM

Dawn FM

  • ザ・ウィークエンド
  • R&B/ソウル
  • ¥1935

仄暗いポップス、底抜けに明るくがらんどうなポップスが好きだからたぶん好きなんだと思う。Out of timeが好き。


牛尾憲輔リズと青い鳥 オリジナルサウンドトラック girls,dance,staircase』

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ASMRみたいな気持ちよさを求めて聴いちゃっているのかもしれないが、良い。心地いい。

 

◯宇佐美りん『くるまの娘』

「母の娘」というテーマが気になって文藝を買ったから、もうそもそもがぐっさりきてしまう設定だった。自分のことを考えた。そういう物語を読むのはつらい。人生のいろんな場面の、忘れられない瞬間に、しこりに、言葉が与えられたかんじがしてしまった。ちょっと頭でっかちというか、思考力が強いというか、饒舌な語りというか、なかんじがしたけど、でも読んでよかった。


宇多田ヒカル『BADモード』

もともとTimeからのシングル曲がどれも好きだったからとても楽しみにしていたけど、予想をはるかに上回る良さだった。だから最近ずっと嬉しい。曲が変わるたびにあまりの研ぎ澄まされた良さに新鮮に驚いている。
アルバム全体に統一感がありつつも、小袋成彬とAGcookとfloating pointsで音のトーンが違うのが楽しい。わたしはAGcookで静かに高揚して、floating pointsで深く沈み込んで、小袋成彬で(すごくいい意味で)クールダウンしている。
本編ラストの「マルセイユ辺り」は、遠くにいる、対岸にいる、届かない他者に対して手を伸ばす切実な衝動、祈りみたいなものを思って、勝手に感極まっている。

 

おわり。続けられますように